このサイトを通して私が伝えたいこと、達成したいこと
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導入
今回は、このサイトを運営するうえで私が皆さんに伝えたいこと、そして達成したいことについて書きたいと思います。 結論から申し上げると、私は「なぜ?」を自分で説明できるような価値のある情報を提供し、それをきっかけに皆さんが自分の頭で考え、判断できるようになることを願っています。 私自身がこのサイトを続ける理由は、科学を心から愛しているからです。自ら探究するだけでなく、その魅力を社会の多くの人に届けたいという思いがあります。
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背景
私は幼い頃から図鑑を読むのが大好きで、母に連れられてよく図書館へ行き、昆虫や恐竜、宇宙に関する本を夢中で読みました。高校生のときには夏休み課題で読んだ本をきっかけにCRISPR-Cas9の技術に触れ、その衝撃は忘れられません(当時はまだノーベル賞を受賞していませんでした)。大学では「細胞を人工的に組み立てて現象を解き明かす」という学問に出会い、さらに魅了され、現在の大学院での専攻につながっています。
大学3年生のとき、「サイエンスライター」という職業を知ったことも転機でした。 「科学といえば研究者が中心」というイメージしかなかった私にとって、科学に関わる多様な道を知った瞬間でした。さらに調べるうちに、科学館で講演を行う人や、でんじろう先生・QuizKnock・予備ノリたくみさんのように科学をわかりやすく伝える「サイエンスコミュニケーター」の存在も知りました。
私も科学を学ぶ立場として、できるだけ多くの人に科学を伝えたい。その思いが、このサイト設立の出発点になりました。
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サイエンスライター・サイエンスコミュニケーターにおける日本の課題
まず博士号について説明します。博士号とは、数年間にわたる研究を積み重ね、論文として成果をまとめ、厳しい審査を経て初めて授与される学位です。つまり「まだ誰も知らなかったことを自ら解き明かした人」に与えられる称号であり、専門性や探究力の証明でもあります。
しかし日本では、博士号を持つ人が科学を社会に伝える役割を十分に果たせていないのが現状です。米国や英国では博士号取得者の数が日本の倍以上にのぼり[1]、科学をリードする立場から積極的に発信しています。彼らの著作や記事は日本にも多く紹介され、その厚みや信頼性につながっています。一方、日本では博士号取得者による発信がまだ限られており、科学の伝わり方が偏ってしまう面もあります。
博士号取得者が発信する意義は大きく、以下の3点に整理できます。
- 専門的知識に基づいた確かな「軸」を持っていること
- 「知識の境界線を広げる」経験を持ち、新しい課題への挑み方を知っていること
- 論文執筆や査読を通じて培った表現力を活かし、学術的な内容を正確かつわかりやすく伝えられること
さらに近年はAIによる情報発信が増えています。AIは大量の情報を素早く示せる一方、誤情報を含むリスクもあります。そのため「何が書かれているか」だけでなく「誰が書いているか」が一層重要になります。科学を正しく理解し、信頼できる情報を選び取るためには、専門性を持つ人の発信が欠かせません。
こうした背景を考えると、日本でも博士号取得者がもっと積極的にサイエンスライターやサイエンスコミュニケーターとして活動することが求められていると感じます。
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私自身の目標
私が目指すのは、科学をより多くの人に届け、関心を広げることです。ここには専門知識を持たない人々への入口を広げることも、より高度な知識を持つ人材の育成も含まれます。現在は博士号を持たない方々が科学の発信をリードしていますが、そこに専門性の高い人材が加わることで、議論がより深まり、新しいイノベーションの創出にもつながると考えています。
また、すでに専門知識を持っている方々にも「伝えること」に関心を持ってほしいと願っています。そのためにも、私自身がまずは深い専門性を身につけ、価値ある情報を提供できる人材になることを目指します。文献を読み、学会発表や論文執筆を通じて客観的に評価されることは、そのための重要なステップだと考えています。
知識を得るだけでは不十分です。それを広く届けることこそが次の課題です。その第一歩として、このサイトを立ち上げました。ここから少しずつでも、多くの人に科学の魅力を伝えていきたいと思います。
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まとめ
科学は私たちの日常や社会のあらゆるところに関わっています。しかし、その面白さや意義が十分に伝わっていない場面も少なくありません。だからこそ、このサイトでは「なぜ?」に答えられる確かな情報をわかりやすく届け、皆さんと一緒に考える場をつくりたいと考えています。
私は研究者としての探究を続けながら、サイエンスライター・サイエンスコミュニケーターとしての役割も果たしていきたいと思います。そして、科学の魅力や奥深さを共有することで、少しでも多くの方が科学を身近に感じ、未来をつくる力につながればと願っています。
このサイトが、科学に触れる入り口となり、また考えを深めるきっかけとなれば幸いです。
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参考文献
[1] 科学技術・学術政策研究所, 『科学技術指標2024』, 学位取得者の国際比較