正しい情報とは何か?AI時代の情報リテラシー入門
導入
いま、私たちは情報が溢れすぎている時代に生きています。 SNSやニュース、AIの文章生成など、さまざまな場面で情報が流れています。 だからこそ、「どの情報を信じるべきか」を自分で見極める力がますます大切になっています。
「そんなに簡単に騙されないよ」と思うかもしれません。 しかし、2024年の「偽・誤情報、ファクトチェック、教育啓発に関する調査」によると、 実際には 85%の人が偽・誤情報に気づかないまま受け取っているそうです[1]。 私自身も、恥ずかしながら騙されてしまったことがあります。
では、偽・誤情報とはどんなものなのか? そして、どんな点に気をつけていけばいいのでしょうか? 今回は、私の個人的な考えも交えながら整理していきたいと思います。
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偽情報と誤情報の違いとは?
総務省は「偽誤情報」を、大きく以下の2つに分類しています[2]。
- 偽情報(Disinformation):意図的にウソとして作られた情報
- 誤情報(Misinformation):勘違いや誤解のまま拡散された情報
この分類をもとに、情報が伝わる流れを考えてみましょう。

パターン1: Aさんが意識的に嘘を発信し(偽情報)、それを見たBさんが「本当だ」と信じて拡散する(誤情報)。 SNS時代では、このように偽情報と誤情報が連鎖しながら広がっていきます。
ここからは私個人の考えですが、もう一つのパターンも意識しておくべきだと思っています。
パターン2: Aさんには嘘をつく意図がないが、本人が正しいと思い込んでいる情報がそもそも間違っている。 それをBさんが信じて広めれば、やはり誤情報になる。
パターン1はよく知られていますが、パターン2は見落とされがちです。 意図の有無に関わらず、間違った情報は受け手にとって有害になりうる。 偽情報には悪意がありますが、誤情報には悪意がないだけで、受け手への影響は変わりません。 むしろ、善意で広まるからこそ気づきにくく、厄介とも言えます。
今回はその中でも特に、AIによる情報と「論文によると」という表現に注目したいと思います。
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AIが出す情報は正しいのか?その落とし穴
AIのおかげで、専門的な情報にアクセスしやすくなりました。 「論文によると~」という投稿もSNSで見かけることがあります。 科学的な根拠をもとにした発信が増えたのは喜ばしいことです。
しかし、AIが生成した文章には"ハルシネーション(虚構)"と呼ばれる問題があります。 つまり、AIがそれらしく見える"間違った情報"を、無意識のうちに作ってしまうことがあるのです。 その結果、AIが"偽情報の発信者"、人間が"誤情報の拡散者"となってしまう場合があります。 これが、AI時代特有の新しい偽・誤情報の形です。
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「論文によると」の落とし穴
SNSでは「論文によると〜」「最新の研究によると〜」という言葉を 見かけることが時折あります。 こうした表現を使うだけで、発信の信憑性が高く見えることがあります。
しかし、学術論文の結論には必ず前提があります。 たとえば、ある論文が「AはBに効果がある」と結論づけていたとしても、 実験の対象が特定の年齢層に限られていたり、 特殊な条件下でのみ得られた結果だったりすることは珍しくありません。
つまり、論文の結論だけを切り取って発信すると、 本来の主張とは異なる意味で伝わってしまう可能性があります。 そして、中にはこうした前提を十分に確認しないまま発信してしまっているケースもあります。
「論文によると」という言葉があるだけで信頼できそうに感じるのは自然なことです。 「新しい」「わかりやすい」「なるほど!」と感じた瞬間、 私たちの脳はドーパミンを放出し、心地よさを感じます。 だからこそ、「論文によると」という言葉自体を信頼するのではなく、 その発信者が中身まで検証しているのかを意識することが大切です。
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SNS・ブログ発信における注意点
SNSやブログなど、個人が気軽に情報を発信できるようになったことは素晴らしいことです。 しかし同時に、情報源が正しいかどうかを十分に確認しないまま発信してしまうケースもあります。 発信者に悪意があるとは限りません。善意でシェアしていることもあるでしょう。 ただ、スピードや生産性を優先するあまり、検証に十分な時間をかけられないこともあるのだと思います。
だからこそ、受け取る側である私たちは「誰が言っているのか?」を意識することが大切です。
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情報は「誰が言っているか」で見極める
情報の信頼性を判断する最も基本的なポイントは、発信者の背景です。 AIやSNSで誰もが情報を発信できる時代ですが、専門家は情報の正誤を論理的に検証できる力を持っています。 たとえば、博士号を持つ研究者は査読論文や学会発表などを通じて専門分野を深めています。 とはいえ、専門家の間でも意見が分かれることは珍しくありません。 「高タンパク食が健康にいいかどうか」などは、その典型例です。
また、肩書きがあるからといって、あらゆる分野に詳しいわけではないことも知っておくべきです。 いくつか例を挙げて考えてみましょう。
例1:医師と学術研究
医師は臨床(患者の診察や治療)においては専門家です。 しかし、学術研究に関しては話が異なります。 研究経験のない医師が、大学などの研究機関で行われている基礎研究について語る場合、その分野の研究者と同等の信頼性があるとは限りません。
もちろん、研究に携わっている医師も多くいます。 ここで言いたいのは「医師の意見を信じるな」ということではなく、「どの領域の話なのか」によって、信頼すべき専門性は変わるということです。
例2:管理栄養士と学術研究
以前、YouTubeである管理栄養士が「この食材は体に炎症をきたすから良くない」と発信している動画を見かけたことがあります。 動画の冒頭で管理栄養士であることが強調されており、一般的にはそれだけで信頼できそうに感じます。
しかし、ここで立ち止まって考えてみたいのは、管理栄養士の資格を持っているからといって、学術研究の方法論を理解し、その研究結果の妥当性を評価できるとは限らないということです。
誤解のないように言えば、管理栄養士という資格や、その専門知識を否定しているわけではありません。 栄養学の体系的な知識に基づいたアドバイスは、それ自体に大きな価値があります。 しかし、最新の学術研究の中身を評価することと、栄養学の知識をもとにアドバイスすることは、求められるスキルが異なります。
一方で、管理栄養士として学んできた客観性の高い栄養学の知識をベースに、学術的知見の妥当性にアプローチすることは十分にあり得ます。 大事なのは、その人が「何の専門家なのか」と「何について語っているのか」が一致しているかどうかを見ることです。
学術的な知見は、論文や学会などを通じて誰でもアクセスできるものです。 重要なのは肩書きそのものではなく、その人がどの分野でどれだけ情報を検証してきたか——つまり学位や専門分野です。
「誰が言っているか」だけでなく、「なぜそう言えるのか」に目を向けることが大切です。
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客観と経験・感情を区別する
成功者、権威のある人、自分が憧れている人—— そういった人の発言は、それだけで信憑性があるように聞こえます。 しかし、誰が言ったかと、それが正しいかは別の問題です。
特に気をつけたいのが、「大体の人が〇〇だ」「みんなやっている」のような、客観性のない表現です。 そう聞くと納得しそうになりますが、一度立ち止まって考えてみてください。
- 具体的なデータや根拠はあるのか?
- 論理的に考えて筋が通っているか?
- それは個人の経験則や感情に基づいた意見ではないか?
もちろん、どんな情報も100%正しいということは極めて稀です。 しかし、一度立ち止まって咀嚼してから取り入れる習慣をつけるだけで、誤った情報を鵜呑みにする頻度は大きく下がります。
客観的な事実と、経験則や感情に基づく意見を区別すること。 これが、情報リテラシーの中でも特に実践的で重要なスキルだと私は考えています。
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まとめ
偽・誤情報は、悪意のあるものだけではありません。 善意の人が発信しても、間違っていることはあります。 私自身も、発信する立場としてその例外ではありません。
大事なのは、「なぜそう言えるのか?」と一度立ち止まって考える習慣です。 もし間違いに気づいたら、それは成長のチャンス。 「なぜ間違いだったのか」を考えることで、正しい情報はより深く記憶に残ります。
ニュースや科学の話題を友人と話し合うことも、理解を確かめる良い練習です。 情報が身近な時代だからこそ、「正しさ」を一緒に考えていけたらと思います。
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参考文献
[1] 山口真一ほか (2024). Innovation Nippon 2024 偽・誤情報、ファクトチェック、教育啓発に関する調査
[2] 総務省「上手にネットと付き合おう!」特集ページ https://www.soumu.go.jp/use_the_internet_wisely/
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